決める

2025/05/15

決める

20代の頃からずっと、数年前に亡くなった姉とよく二人で舞台を観に行っていた。そんな時決まって「お昼ご飯にどこで何を食べるか」を決めるのはわたしの役割で、若い頃のわたしはそれがちょっと嫌だった。

ただ、その頃の「決める」という行為が、今の仕事や交流に活きているなと思うことが最近よくある。

意思決定をする・意思決定を促す

仕事をする上で「誰かが『決める』ことさえすれば物事がスルスル動く」みたいな状況はわりと多い。自分で決定までいかなくても、「AとBのどちらがいいですか?(個人的にはA案がいいと思うんですが)」と選択肢を提示するだけでも物事は進みやすい。

明確な「正解」がないミッションは特にそうだ。「特にどちらにも強い気持ちが無い・みんな誰かが決めてくれないかなと内心思ってる」みたいなミッションは宙に浮きがちで、なかなか物事が進まないように見えるが、「決める」という行為さえ行われれば、あとは決まったことをやるだけ、というシンプルなタスクに化ける。

いま振り返ると、「お昼ご飯にどこで何を食べるか」というのは、その「明確な正解がない中で決める」という行為に慣れるのに良い訓練だったのではないかなと思う。

自分にも強い意志がない時にどう進めるか

意思決定をする・もしくは意思決定を促す際に一番困るのは、「自分自身にも強い意志が無い場合にどう進めるか」だと思う。

お昼ご飯を決める時、自分が食べたいものを中心に選んでいたかと言えば、そうでもない。むしろ当時の自分はうつ病やらなんやらで「〇〇を食べたい」という意思は全然湧かなかった。姉に聞いても「なんでもいい」と言う(ちなみにこれは真っ赤な嘘でマクドナルドやどこにでもあるチェーン店は普通に嫌がる。個人のお店かチェーンでも姉の好みに引っかかるお店を選ぶ必要がある。あとまずいものを食べるとわかりやすく機嫌が悪くなる。めんどくせえ)。

そんな中でどうやってお店を決めていたかというと、「自分の意志に依存しない判断軸を持つ」というやり方をしていた。

自分の意志に依存しない判断軸

何が食べたいとか、どのお店に行きたいとかも無い時、わたしがどのようにお店を決めていたか(お店候補を出していたか)というと、以下のような条件から絞り込んでいた。

  • 行く劇場の周囲n百メートル以内
    • 一番大事なのは「劇場に遅刻しないこと」なので、劇場に比較的近いお店
  • 開演時間に充分に間に合う開店時間
    • 例えば舞台が13時開演なのに、12時開店のお店に入るのはリスキーなので11時開店のお店にする、など
  • 料理の提供が遅くなさそう
    • 提供が遅い料理のお店だと、焦って食べなければいけないので、例えばカレーやパスタなどの提供にかかる時間が予測しやすいお店を選ぶ
  • レビュー点数や口コミ
    • Google Mapsとか〇べログとか。3.x以上みたいな感じで適当に
  • 姉の好みのもの
    • 自分ではなく姉が好みそうな料理から絞り込む。
      • NG:ファーストフード・丼もの・そば等
      • OK:イタリアン・エスニック系・中華等

これを抽象化して仕事の意思決定プロセスに落とし込むとこんな感じになると思う。

  • 必須の外せない条件は何か
    • 意思決定をする上で、「これは外せないだろう」あるいは「これを満たせないと承認は降りないだろう」という条件を見つける
    • 例)開演に絶対間に合うこと
  • 外すとデメリットが大きい条件は何か
    • これを満たせないと意思決定者やステークホルダーにとって負担が大きかったり、デメリットが発生するような条件があるかを見つける
    • 例)開店時間が遅くないか、食事の提供が遅いものではないか
  • 承認がおりやすい条件はあるか
    • 意思決定の責任者やステークホルダーが決定しやすい条件や、「これを満たせるとYESと言いやすい」条件はあるか探る
    • だいたいは意思決定する人の負担が少なかったり、ステークホルダーにとってメリットが大きいような条件になることが多い
    • 例)評判がいいお店、好みに合致する料理

ここまでで、選択肢が1個まで絞り込めれば「これにしようと思うけどどう?」と提案すればいい。もしくは自分で決められなくても、とりあえず条件を満たせてそうな中から選択肢を2-3個ぐらいまで絞り込んで、「どれがいい?(+可能であれば相手が判断材料にしやすいコメントをする)」と聞けば、大抵のことは何かしら結論が出るか、決められないとしても「考慮しなければいけない更なる条件」が聞き出せることが多い。少なくとも「決まらなくて何も進まない」という状況からは脱出できる。

相手が決めようとしない場合でも「じゃあ一旦Aで進めるから何かあったら教えて」という感じで進めてしまえばいい。何か間違ってたらストップがかかると思うし、失敗したら失敗したで「このやり方は失敗だったね」という知見が溜まるので、責任者が状況を把握していればそこまで悪いことでもない。

※このやり方は心理的安全性が高い職場じゃないと成り立たない可能性はある。心理的安全性が低い職場だったら「責任者は状況を把握していた」とわかるようにログを残したりしながら進めようね

という感じで、自分のモチベとか好みとかやりたいやりたくないを一旦置いておいて、「どういう条件なら意思決定がスムーズに進むのか」を考えていくと、明確な正解のない意思決定を前に進めるのに役立つかなと思う。

飲み会の幹事ってけっこう意思決定の塊

急に老害みたいなことを言うけど、「若者に飲み会の幹事を任せる」みたいな嫌われがちなムーブも、わたしがお昼ご飯のお店を決めていたみたいに、「若者に意思決定の練習をさせる」っていうのから始まってるんじゃないかなと思う。なので最近は歓迎会とかの幹事を新卒やジュニアの人たちに任せてみたりしている。決して面倒くさいからではない。本当に。

おわりに

この記事をどう書こうかな〜とふわふわ考えていた時に、こにふぁーさんの「提案のレベルを上げる」という発表があったので、多分にインスパイアされていることをここに表明しておきます。いつもお世話になっております。

https://speakerdeck.com/konifar/ti-an-noreberuwoshang-geru-number-qiitaconference


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